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公式第十六回

・問 甲は、かねてから自分を裏切ってきた乙を見つけたので、ピストルを撃って乙を殺した。所が、甲は気が付かなかったが、実は乙も甲を殺そうと思っており、一瞬遅れれば、甲が殺されるという状況にあった。甲の刑事責任はどうか(司法試験昭和60年、平成元年口述類題)。

・事例問題を解く道筋
 まずは、問題文から刑法上問題となる事実を取り出す!
 甲が乙を射殺していることから、199条の構成要件に該当する。
 次に、甲について、違法性阻却事由(35条~37条)がないか検討する。
 乙も甲を殺そうと思っており、一瞬遅れれば、甲が殺されるという状況にあったことから、甲の行為は、正当防衛に当たるのではないか?
 正当防衛が成立するかを検討する!

・正当防衛(36条1項)
  急迫:現に法益が侵害され又は法益の侵害される危険が目前に迫っていること。
  不正:違法であること。
  侵害:他人の権利に対して、実害又は危険を与えること。
 ここまでみると、甲の行為について、正当防衛が成立するとも考えられる。つまり、今回の事例では、甲の行為について、正当防衛が成立することになる。
 しかし、今回の事例のように、たまたま正当防衛の要件を満たすような場合に、そのまま正当防衛の成立を認めるべきではないのではないか?

・防衛の意思
  必要説
   ∵防衛行為においても、通常の行為と同様に、主観と客観の両要素から構成されるべきである。
   ∵外見上は防衛行為と見えるような行為を明らかに犯罪的意思で行った場合までを正当防衛と解釈することは妥当でない。
   ∵36上1項の「ため」から防衛の意思が必要であることを読み取ることができる。
  不要説
   ∵違法の判断は客観的にされるべき。
   ∵正当防衛はとっさの場合に反射的に行われる場合が少なくない。
   
・防衛の意思の内容
  動機説:積極的な防衛の意図・目的であるとする説。
  認識説:不正な侵害を認識し、それに対応する心理状態とする説。

**復習**
Q1、刑法36条1項を暗唱しなさい。
Q2、防衛の意思必要説の論拠を3つ挙げなさい。
Q3、防衛行為をした者が、防衛の意思と攻撃の意思の両方を有していた場合に、防衛の意思を認めるべきか。
Q4、防衛行為をした者が、憤激・逆上していた場合に、直ちに防衛の意思を否定することになるか。

**予習問題**
問題:甲は、保険会社の人事課に勤務しているが、大学時代の同級生乙宛に私用で手紙を出すにあたって、当該会社の便箋、封筒、切手を使用した。甲の罪責を論ぜよ。

 



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