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公式第十三回

2012年09月18日
「責任」について

・「責任」を語る必要性
 →刑法は国民の自由を保障していた。(刑法の自由保障機能)
  →自分がわざとやった行為については自分で責任を負うべきだが、他人がした行為に責任を負っては国民がびくびくしながら生活をしなければならない。(ある日突然警察がやってきて、誰か別の人が犯罪をしたからといってあなたを捕まえにくるような社会が自由を保障しているとはいえない。):個人責任
   →刑法上の責任の範囲を明確にする必要がある。

・「責任」の内容
 ・「責任」とは、構成要件に該当する違法な行為をなしたことについての道義的責任、非難可能性をいう。
  →一人間として、その人が犯罪行為をしたことを非難できるかどうか:主観的責任
  ex.非難できないと考えられる例:赤ちゃん、障害者、よっぱらい

・「責任がある」というための要件(突破すべき壁)
 1、構成要件に該当し違法であり、さらに行為が違法であるという意識があること
 2、故意または過失があること
 3、責任能力があることーーーーーー↓
 4、期待可能性があることーーーーーーー→「責任阻却事由」

・「責任能力」とは
 →「刑法上の責任を負いうる能力」より詳細に言うと「事理を弁識し、または弁識に従って行動する能力」
  →あたらない例:刑事未成年(14歳未満くらい:そもそも事理を弁識できない扱い)・障害者(弁識した良心に従って行動できると考えられない)など
 ・責任能力は裁判時に審理されるが、責任能力の有無については行為当時を基準とする。

・原因において自由な行為
 ・責任能力の有無についての判断基準時は「行為時」。
  →「行為時」に責任能力がなければ処罰されないと言い切ると問題が生じる。
   ex.酒乱であるのを知っていてあえて酒を飲んで暴行に走った
  →処罰すべきではないか?
   →Y1、処罰すべきである。酒を飲むことがもはや犯罪行為の手段である。
   →Y2、処罰すべきである。因果性の有無から判断して、責任能力の判断時期をずらせばよい。
   →N、責任能力がないのだから、処罰できない。


**復習**
Q1、責任能力の判断基準時は「行為当時」とする原則を、なんというか。
Q2、刑法39条2項は「精神の障害により行為の違法性を弁識する能力、またはそれにしたがって行動する能力が著し低い者」について規定しているが、このような人のことをなんというか。漢字で書け。(ぜひ一度『手書きで』書いてみてほしい。テストでいきなり出ると困惑するものである:当社調べ)
Q3、Aは、「車で人をひいてみたい」と思って39条を確認し、責任能力がなくなっていれば処罰されない(もしくは減軽される)と考え、酒を飲んで車に乗ったところ、家から10mはなれたところの検問で捕まった。Aを「殺人未遂」として処罰すべきか。(根拠は難しいので、すべきかどうかだけでよい。考えてみてほしい)
Q4、Bは、「自分はてんかん持ちである」と知っているが、それをあえて隠して免許を取り、彼女を連れてドライブに行った。Bはその際、(人をひき殺すかも知れねぇなぁ…ま、いっか)というところまで予定していた(これを未必の故意といい、今回は故意ありと判断する)。このBについて、「殺人未遂」で処罰すべきか。その際、Q3Aとの相違も検討してほしい。


公式第十二回

2012年09月11日
「違法性とは」

・違法性は、犯罪の構成要素のひとつである。

・刑法に規定された行為をすると、構成要件に該当する。構成要件に該当すると、違法性があり責任もあると(大部分の学者・最高裁は)推定する。
 ←刑法には自由保障機能があった。人間は基本的に自由なのである。刑罰の行使が広範になされては、とても自由とはいえない。そこで、刑法は「処罰に値する犯罪」のみを処罰する。そのためには「処罰に値しない犯罪」を排除する必要がある。その一つ目の柵が違法性の柵であり、その柵は「違法性阻却事由」によって処罰すべきでないものをはじき出す。

・「違法」とは、法がその行為ないし事実を許さないこと。(刑法が持つ理想の国家を作るため許されない行為を規定したのが刑法だった。)
 ・「許さない」とは、どういう状況であるか。
  →法に反している行為は違法であるはずである。刑法73条以下に規定された行為は「禁止規範」なのであるから、これに反したら違法である(形式的違法性)はずである。
   ex.赤ちゃんが人を殺すこと=人間が人間を殺すこと
  →ところが人はいろんな事情で犯罪「らしき(あくまでまだ推定段階)」行為をする。パッと見法律に反しているが、その人を法に反しているからといって処罰に値するレベルの違法性があるかどうかは、内容を見なければわからない(実質的違法性)。
   ex.人を刃物で切り刻んでいる人がいるが、その人は医者だった。→刑法的には禁止されているが、同時に医師法で許されている(この部分は形式的違法性の判断)。→しかしこの医者が切り刻んでいたのが病気とまったく関係ない場所であった場合には別途考慮が必要なはず(この部分が実質的違法性の判断)。
 ・違法である判断はどのようにすべきか。(違法性の実質)
  →「第一の枠はかっちり決める」の説明から、行為を客観的に見て決める(客観的違法性)。刑法は評価規範と決定規範に分けられるが、構成要件に該当する行為をすると「違法である」と「評価」され、さらに35条から37条にあたる場合には、「違法でない」と「評価」される。
  →「違法である」ことは、法が禁止した行為を「あえてやった」という故意が必要である。故意は心の中のことなので、客観的に見ることはできないはずである。(主観的違法性)
 ・「何」をみて「許さない」と判断するのか。
  →どんな犯罪にも過程がある。その過程の客観的な部分、主観的な部分のどこを判断要素にできるか:上記主観的違法性と客観的違法性の説の傾斜によって、重要である・ない、使える・使えないがわかれる。

・「違法性阻却事由」
 ・刑法は35~37条に違法性を阻却する事情を規定する。
 ・授業では、正当行為・正当防衛・緊急避難について触れた。授業で扱った部分は非常に少ないので、各自基本書・教科書・参考書などで確認してほしい。すごく細かい事件もある。


**復習**
Q1、刑法には「違法性」について規定した部分があるか。
Q2、Aは、恋人を奪われ以前から恨みを持っていたBを、人気のない暗闇で背後からナイフで一突きし、Bを失血死させた。…このような事件の中には、どのような「客観的違法要素」があると考えられるか。いくつでもよいので考えてほしい。
Q3、あなたはAの元彼女である。AはBを殺した後、あなたを呼び出して心中しようとあなたを自室へ呼び出し、ナイフで肩をちょっと切りつけた。あなたは軽い怪我を負いつつ、必死に逃げたがAはものすごい形相で追ってくる。逃げるのに夢中だったあなたは、途中、通行人のCを突き飛ばしてしまった。Cは倒れたときに頭を強く打ち、死亡した。後日、Aが逮捕された後にCの遺族がやってきてあなたに「この殺人者め」と呼ばれることとなった。あなたはどのように遺族に反論すればよいか。今回の授業を参考に主張してほしい。

**予習**
Q1、責任とは、行為者が構成要件に該当する違法な行為をしたことについての「?????」をいう。
Q2、わが刑法の責任の概念は、『「??」がなければ刑罰はない』という近代刑法の基本原則に基づいている。
Q3、責任主義とは、犯罪が成立するためには、「???」責任および「??」責任を内容とする責任が必要であるとする原則である。
Q4、規範的責任論によれば、責任の内容は、「??」能力、「??」・「??」、「???」の意識(とその可能性)、「??」可能性である。
Q5、心神喪失者とは、精神の障害により行為の違法性を「??」する能力、または「??」に従って「??」する能力がない者をいい、心神耗弱者とは、それらの能力が著しく低い者をいう。
Q6、責任能力は犯罪行為の時に行為者に備わっていなければならないという原則を、「??」と「????」との同時存在の原則という。
Q7、「???????????(11文字)」とは、みずから精神の障害を招き心神喪失・耗弱の状態で犯罪の結果を惹起した場合であり、その結果については完全な責任を問う。